「老後には2000万円の貯金が必要」——そんな言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。
確かにお金は大切です。ですが、それよりも、”もっと大切な資産”があることをご存じでしょうか?
それが「健康貯金」です。
吉村芳弘氏の著書『80歳の壁を超える食事術』では、これからの人生を豊かに生き抜くために必要なのは「お金」ではなく「健康」だという考え方が丁寧に説かれています。特に、65歳から70代の過ごし方が、80代以降の人生を大きく左右するといわれています。
本記事では、そのポイントをわかりやすくまとめ、今すぐ始められる実践的な方法もご紹介します。
健康寿命がどんどん伸びる今、「70代がラストチャンス」になる理由
日本人の平均寿命は世界的に見てもトップレベルです。
しかし、健康寿命(介護や支援を必要とせず自立した生活を送れる期間)との間には大きな差があります。
つまり、長生きはできても「健康に生きる」ことが難しい人が増えているという現実があるのです。
そして著者が強調しているのは、この差を縮めるために最も重要なのが“「70代」”であるということ。
65歳を過ぎたら、生活や食事を“ギアチェンジ”し、本気で健康を蓄える時期に入る必要があります。
病気がないから大丈夫、と思っているうちに筋力や体力が落ち、気づけば「フレイル」や「サルコペニア」の状態に。
一度こうなると、80代以降のリカバリーは非常に困難になります。
お金は使えなくなることもある。でも、健康は「生きる力」になる
たとえ2000万円の貯金があっても、寝たきりや要介護状態になってしまっては、そのお金を自由に使うことができません。
旅行に行くことも、おいしいものを食べることも、外出もできないかもしれません。
お金は「健康」があってこそ価値を発揮するもの。
だからこそ、筋肉、体重、食欲といった“健康資産”をしっかり蓄えておくことが大切です。
では、どうやってこの健康貯金を作ればよいのでしょうか?
「痩せない」ことが、70代からの健康貯金の第一歩
高齢になると自然と食が細くなり、気づけば体重が減っていた……というのはよくある話です。
しかしこれは見逃せません。
なぜなら、高齢者が痩せてしまうと、筋肉も一緒に減ってしまい、転倒・骨折・寝たきりのリスクが高まるからです。
痩せること=健康、というのは若い世代の話。70代以降ではむしろ、少しぽっちゃりしているくらいが健康的だとされています。
著者は、「とにかく痩せないこと」を目標にすべきだと語ります。
そのために必要なのが、しっかりカロリーとタンパク質を摂ること。
高齢者に必要なタンパク質量は意外と多く、毎食しっかり意識してとらないと足りなくなるのが現実です。
肉、魚、卵、大豆製品などを積極的に取り入れ、筋肉を守りましょう。
料理が負担になったら「作らなくてもOK」の発想を
年齢を重ねると、「料理をするのがしんどい」と感じるようになります。
買い物に行く、献立を考える、調理する、後片付け……すべてが体に負担です。
特に、子どもが巣立って夫婦2人、または一人暮らしになった方にとっては、料理が“やる意味を感じにくい労働”になってしまうこともあります。
そんなとき、「料理は家でちゃんと作るもの」という固定観念は捨ててしまいましょう。
食べないことが一番よくありません。
・スーパーのお惣菜
・コンビニの弁当
・ツナ缶、サバ缶
・ちくわ、かまぼこなどの練り物
・冷凍野菜や冷凍おかず
これらをうまく組み合わせて“無理なく食べ続けること”が、健康を維持するカギとなります。
MCTオイルやプロテインで「食欲」と「栄養」を補う
「食が細くなった」「何を食べてもおいしく感じない」と感じるときは、MCTオイルの活用が効果的です。
MCT(中鎖脂肪酸)オイルには、食欲を高めるホルモン「グレリン」を活性化させる働きがあることが分かっています。
1日大さじ3杯程度を目安に、味噌汁やサラダなどにかけるだけでOK。
味や匂いもほとんどありませんので、どんな料理にも合わせやすいです。
また、手軽にタンパク質が補えるプロテインパウダーも強い味方です。
牛乳や豆乳に混ぜたり、スープに入れてもいいでしょう。
軽い人間関係が“心の健康貯金”になる
健康を支えるのは体だけではなく、心のつながりもとても大切です。
誰かと話すことや笑うことは、脳への刺激にもなり、気持ちも前向きになります。
無理に深く付き合う必要はありませんが、もし興味のある趣味のサークルや地域の集まりがあれば、思いきって参加してみましょう。
・気になるイベントに顔を出してみる
・散歩や体操教室に参加してみる
・ジムで軽く会話を交わす
そんなちょっとした人とのつながりが、孤独を防ぎ、毎日に小さなハリや楽しみをもたらしてくれます。
「自分は付き合いが苦手だから…」と決めつけず、できる範囲で関わりを広げていくことが、80歳の壁を越える心の準備になります。
医師とは遠慮せず“本音で話す”姿勢を
高齢になると、どうしても病院にかかる機会が増えてきます。
そんなときに大切なのは、医師との関係を“遠慮”ではなく“信頼と対話”で築くことです。
多くの方が、「先生に悪いから…」「聞いたら迷惑かも…」と、医師に対して遠慮しすぎる傾向があります。
しかし実際に90歳を過ぎても元気に過ごしている方の多くは、自分の体に対して主体的な姿勢を持ち、医師としっかり対話しているのです。
たとえば、
・「この薬は多くて飲みきれません」
・「これは何の薬ですか?」
・「この治療は本当に自分に必要ですか?」
と、自分の気持ちや疑問を率直に伝えています。
医療は“受け身”で受けるものではなく、一緒に考え、選び、納得して受けるもの。
自分がどう生きていきたいか、どんな治療を望むかを自分の言葉で伝えることが、人生の後半をよりよく生きるカギになります。
ときには、医師との相性が合わないこともあるかもしれません。
そんなときは、「この人に任せていい」と思える医師を探すのも一つの選択です。
自分の命を預ける相手だからこそ、納得できる関係性を築いていくことが大切です。
遠慮せず、疑問はその場で質問する。
自分の希望や不安はしっかり伝える。
——その小さな一歩が、80歳の壁を越えるための“医療との向き合い方”を変えていくはずです。
まとめ|お金を貯めるより、健康を守る。70代から始める新しい老後準備
『80歳の壁を超える食事術』が教えてくれるのは、
「お金では買えない価値=健康」を、今この瞬間から守っていこうということです。
70代はまだ間に合います。いや、むしろここからが本当の準備のスタート。
体と心の“貯金”をしっかり作っておくことで、80代、90代も自分らしく生きられる力が身につきます。
あなたの健康が、家族の安心にもつながります。
ぜひ今日から、「健康貯金」、始めてみませんか?
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